「 …そんなハッキリ言わなくても… 」
「 すいません 」
「 …まあでも、
…ちゃんとライヴ見て帰るか
見た事、無かったし 」
俺は手を振り
三枝も『ごめんねー!』と言いながら
音楽堂に向かった
キャンピングカーは
色々な場所が禿げている
ホワイトカラー
頭をぶつけない様に段を上がり
ビリジアングリーンの天井に
手を沿いながら、中を進む
両脇の革ソファーに
池上と真木が既に寝ていて
流れる曲はチャックベリー
真ん中の黄色いテーブルには
ガロンアイスとBudwiserの缶
飛び散ったタコスと、チリペッパー
きっと池上の、『夢』のチョイスだろう
目覚まし時計が置いてあって
18時にセットされてる
一番奥の、真っ赤な革張り席
あずるはタオルを腹に置き座って
暗幕の様なカーテンが
閉められた窓に頭をもたれて
"ターミネー熊"の様になっていた
その空いた左側に身体を横たえ
首の後ろで、手を組む
両足は、背もたれの上に乗せた
―― あずるは起きていたのか
ゆっくり身体を起こして
白い腕を伸ばし、俺の上に乗る


