群青の月 〜『Azurite』take00〜





あずるはパジャマのまま
郵便受けのある、
一階入口まで降りて来てしまっていた


腰に、必死に抱き着いてくる



「 屋上から独りで出たら
駄目だって言ったろう! 」


「 だって! 」



辺りを見回しながら
あずるを先に奥にやった
扉を閉める



殊更、何も無かった様に
五階の、今は無人の廊下へ
手を引いて上がる

エレベーターは避けた



シンとした廊下には、二人の足音だけ
大きな防災扉の所まで行き、しゃがむ




「 あずる ごめん  驚かせた 」


「 …も、もういいよ
リュウジが危ないよ 」



緊張で強張る頬を、指で引っ張る



「 いふぁいよ 」




「 ホントに、鍵落としただけ
…何を心配してる? 」



「 ……要らない 」


「 どうした 」




「 ……なんでもない 」




「 …俺ももう
おまえが居さえすればいいよ 」




―― あずるが胸から離れて
驚いた目で、俺の顔をジッと見る



そして
泣きながらしがみつき


『 助けて 』

そう言った




―― 多分、生まれて初めて
彼女が使った言葉




「 …絶対 俺にしか言うなよ 」



「 う… 」



「 ――…約束しろ 」



「 はい… 」



「 …どう、助けたらいい? 」



「 ……違… 」


「 違う? 」




「 ……す…好き過ぎ て
どうしていいか…わか… 」









「 ……ごめん あずる 」


「 …う…? 」



「 …俺が頭、おかしくなりそう…
この場で押し倒したいの
必死で耐えてますが 」




あずるは泣きながら笑い出し
俺は、その手を引いて
一緒に 階段をあがる