午前中はやはり雨
雷が鳴って、
ショッキングピンクの光が走った
皆で部屋の真ん中に集まり
池上が作って来たチラシを
百枚づつ数えて、わける
デッキからは
オールディーズが流れていた
「 …98 100! そっちは? 」
「 終わったよ 」
「 2000枚プリントして来た 」
「 しっかしさあ
池上ナイスだよ!!いつの間に
こんな写真とったんだよ
これはいいわあ 」
池上が作って来たのは
『Azurite』と黒刷りの紙の上部に
手書きの青い文字
下にはメンバー名が
ポジションごとの印刷
そして日付と時間、"ライヴハウスJemu"
真ん中には写真があるのだが
ベットに寝ている あずるの上から
俺が見ている瞬間の写真
「 たまたまだったんだ
現像してみて、びっくりしてさ
皆に見せようと思ったんだけど
チラシの話が出てさ 」
照明は、オレンジランプ一本
画面の左には
俺の右半分位の身体と、腕が写っていて
ベットで少し丸まる、起きかけのあずる
ちょうどシーツの陰が
羽根が生えている様に見える
細い腕を伸ばし
俺がそれを受ける瞬間だ
「 …顔がやばいよな
なにこの笑顔 アズルさん 」
真木が煙草を吸いながら
チラシを上に向けて
やっばいわ〜と再度呟く
「 池上さ 写真でも行けるんじゃね? 」
「 凄いね
外国のポートレートみたいだな 」
「 二人を写したから
そんな風にとれたんだと思うよ 」
池上が嬉しそうに、チラシ数えを続ける
真木が後ろを向いて、
チラシを数えたまま黙っている
あずるに声をかけた
「 ボウズ、静かじゃん
……さては恥ずかしいのか? 」
真木は笑い
あずるは首が真っ赤に染まっている
池上が少し心配そうに
「 …アズヤン、この写真イヤ? 」
すると首を、横に振り
小さく「…うれしい」と言った
雷、が少し遠退き
雨足が 弱くなる


