満腹になり
ご馳走様でしたと、店内を後にする
車の通りも疎らになって
ロータリーの信号が
規則的に点滅を繰り返していた
マサヤさんがくれた、店の名刺を
皆で裏にしたり表にしたりする
池上が
「あの人いい人だね
今度社会勉強に、
お店行ってみようかな」と
少し浮かれていた
知らない世界に触れる事に
かなり、池上は敏感だ
横断歩道を渡るビル風が
今日は、雨の匂いを運んで来る
あずるは
一番最後に、店から出て来た
髪が伸びて来て、ベリーショート
五分刈り丸ボウズからは、卒業
俺が持って来た白いガーゼシャツは
あずるには、だいぶ大きい
体の線に沿って、空気に靡く
下は相変わらず501
スニーカーは洗って干したので
今は健康サンダルだ
手には白いビニール袋を持っている
今夜は明け方まで
屋上で練習
夜が明けたら眠って、
夕方からスタジオ
この日は零時位には寝て
朝8時には起きる
そして野外音楽堂に向かう
「 親父さんが、ギョーザくれたよ
皆で帰ったら食べろって 」
「 白いメシ、あったっけ 」と
真木が覗き込む
「 帰ったら俺が炊くよ 」
「最近すっかり、青山くんは
米研ぎ当番だね」
「 コイツの炊くメシ美味いよな 」
笑って
手の平を拡げてみせた


