群青の月 〜『Azurite』take00〜





新宿Jemuのライヴまで一週間



八月の
目が痛くなる陽射しの中

あずるは光に弱く、
真木からサングラスを借りたりしている



過ごしやすい夜に練習

昼は寝るというパターンに変わっていた




あずるが真夜中近く
また忽然と寝たので休憩を兼ね

部屋の外の、ど真ん中に木箱を置いて
氷冷皿に作ってあった
アイスコーヒーをかじる


外食用テーブルと化した木箱は
マジックでイタズラ書きや
池上が描いた、結構良い味の
イラストなどで埋まっていて


ターミネー熊が
"こんにちはくまー"と
吹出し付きで描いてあった

それを俺達らしき、
池上が描いたキャラクター達が
それぞれ『らしい』台詞を喋っている




「 一回どっか出るか 」

ギターを
膝に置いて弾きながら、真木が言う



「 出来るの?」と池上


「 そこはうちのイベント
使うしかないだろ

野外があるんだよ
代乃木の野外音楽堂

中心になって動いてる所も学生で
ツテでデカイの動かせたけど
段取り悪くて、うちの方にも話が来た
そこでJemuへの客を呼ぶ
三日後が本番 」



「 曲、配るとかは? 」

池上が正座する


「 それは後でいいよ
録るのメンドイし

期間が短いから、チラシ作って
Jemuへの布石一本に絞ろ 」


「 わかった
僕、チラシ作ってみてもいい? 」


「 ちょっと待った 」


「 青山? 」



「 炎天下、あずるを晒したくない 」


「 あ〜… それがあったか
怖い顔すんなよ
考える

休憩テントはあるけど
日影なだけで、たかが知れてるしなあ

夜の部に入れても
昼の待ち時間をどうするか
すぐ裏が駐車場だから、車待機か 」



「 僕がキャンピングカー出す 」


「 持ってんのか! 」


「 だって僕いま、そこで暮らしてるし
中古だけどね 」


「 …オマエが一番
ミュージシャンぽいな 」
と真木が言い



池上が "夢だったんだ" と
ニカッと笑った