無事、マイクも変えて貰い
五曲出来た歌に
あずるはキーボードの席に座って
少し鳴らしながら、詩をつけている
池上が
「 JILLのシンバル欲しいな 」と言い
真木は
先程とは、うって変わった真剣な表情で
あずると曲について、会話を交わす
帰りには、
マイク事件ですっかり仲良くなった
スタジオのお兄さんと話し
喫茶店に入って帰ろうと
外の見える、広い窓のある席に向かった
各四人席で、
仕切りに観葉植物が植えられ
モーツァルトの曲がかかっている
二階からの窓からは
新宿駅前の交差点
人の頭が、切れる事無しに行き交う
あずるは
小さい無地のノートを出して
何か思い浮かぶと書き込み
池上は、
やっぱりシンバルを買いに行くと
席を立った
ウェイトレスが
トレーに四つ、飲み物を運んで来る
真木と俺の前にブレンドを置き
空席の池上の場所には、アイスティー
あずるの前には
真木が頼んだ、アイスココアが置かれる
ウェイトレスが去った後
真木が思いもかけない事を呟いた
「 …なんかさ 」
「 うん 」
「 もし、デビューなんて事になって
オレだけ外されたら悲しいなってさ 」
「 え… 何いってんだよ 」
「 いやいや、有り得るよ
正直、オレが一番下手くそだからね 」
あずるが、顔をあげた


