「もっと自然に笑え。
ほら、ニッ。」左右の人指し指で
口の端を上に上げながら
私に向けそう言ってきた。

その顔が少し
おもしろくて笑ってしまった。

「ほら、その笑顔やって。
皆川ええ笑顔してる。
今の顔で笑われたんは
ちょっと気にくわんけど。」
そう言った岡くんの
微笑みに引き込まれるのが分かった。



「麻奈でいいよ。」
笑いの余韻を残しながら、私は言う。
「じゃあ麻奈ちゃん。
俺も慎吾でええよ。
実はちょっと緊張しててん。
よろしくな。」