恋人ごっこ






「 …ごめん、帰る。」

そう言葉にするのだけで、私は精一杯だった。




…荷物も、少し乱れた洋服も、気にする余裕なんてなくて、


逃げるように玄関へと向かった…。





「 …っ、神菜っ!!」


優斗が声を上げた。


立ち止ることも、振り向くこともできなかった私を、優斗が力づくで引き止めた。





「 離して… っ」

優斗の腕のなかで、そう訴えると、後ろから抱き締めるその腕の力は強くなる……









「 …ごめん 」


消えてしまいそうなほどに、弱々しく優斗はそう呟いた…。





「 ………。」




「 ……ごめん、



俺、最低なこと言った…… 」




…その声は、微かに震えていて、今にも泣いてしまいそうなほどだった……


その弱々しさとは裏腹に、抱き締めるその腕にはますます力が籠る…








「 …腕‥痛い…… 」


どう答えていいのか判らずに、そう言って誤魔化すと、腕の力はすぐに緩くなった……