…翌日、
家に戻った私は、優斗の留学のことを考えて鬱になりかけていた…
漫画や小説なんかで、恋人の留学で離ればなれになることに悲しむ主人公を見ては、
私は「本人のためにも、行かせてあげればいいじゃない」と、ひねくれた感想を抱いていた。
でも、実際 自分の身に起きてみると、主人公の気持ちがよく判る…。
これは確かに
泣きたくもなる……
…私はベランダに出て空を見上げた。
明日には優斗は この空を越えて、遠い国に旅立ってしまうのだ…
そう思うと、
自然とため息が溢れた…。
…そんな私に、
「 かんなおねぇちゃん、」
と、隣のベランダから声が掛けられた。
舌足らずなその声は、朋華さんの子どもの晶ちゃん。
隣のベランダに顔を覗かせると、晶ちゃんが私に手を振っていた…
朋華さんと晶ちゃんは、
少し前から このお隣の中村さん家に暮らし始めている。
春兄ちゃんは相変わらず晶ちゃんLOVE。なので最近は超機嫌がいい…
今だって、晶ちゃんが春兄ちゃんの部屋にいるので 一緒に遊んでいたのかもしれない…。
「 こんにちは。晶ちゃん
春兄ちゃんと遊んでたの?」
「 うん。かくれんぼしてるの。」
「 かくれんぼ中なんだ〜
ずっとここに隠れてたの?」
「 うん!」
その可愛らしい笑顔に私の心が癒される…
「 …でも、ベランダじゃすぐに春兄ちゃんに見つかっちゃうんじゃない?」
私がそう尋ねると、晶ちゃんは笑顔のまま答えた
「 大丈夫だよ、晶が おにだもん。」
「 ……えっ、」
晶ちゃんが おにってことは、春兄ちゃんが隠れているわけだ。
でも、晶ちゃんは春兄ちゃんを探していない…
そうとは知らず、
春兄ちゃんは晶ちゃんに見つけてもらうまでずっと隠れたままである…。
( 晶ちゃん…、
賢いというか、腹黒いというか…、)

