恋人ごっこ




 スペイン…


 太陽の国……


 日本との時差は
 マイナス8時間。

…たぶん。







私の頭の中には、そんな情報がぐるぐると巡っていた…



そんな遠い国に優斗は行ってしまうなんて……




思わず泣きそうになったけど、ここで泣いたら優斗を困らせるだけ。

そう自分に言い聞かせて、泣かないように頑張った。



優斗の邪魔にはだけはなりたくない…。







「 …、神菜、聞いてる?」


何も言わない私に、優斗は心配そうに顔を覗きこんで声を掛けた。



「 う ん、聞いてる…。

スペインだよね。


いいね、美味しいものいっぱいだね。」





笑顔を貼付け、そう答える…




「 …そういうわけで、明後日には出発するから。」




「 あっ、明後日っ!?」





急すぎる…

そう優斗に詰め寄ると、




「 …うん、おっさんが勝手に決めてきた。」


優斗も気まずそうにそう言う…




「 ………。」







( くっそぅ、

おじさんめ…っ!! )




心の中でおじさんに向かって、そう怒りをぶつけることしか



私には出来なかった…