恋人ごっこ







「 神菜に絡むな。

勝手に食うな。



…というか、
アンタ 何しに来たんだよ、」



優斗が不機嫌さを隠すことなく、おじさんに言う…




その言葉で、
さっきの留学の話を思い出した…


おじさんも、急に真剣な表情になる



そして、
ちらっと私の方を見た…




( …あぁ、

これから私に話したように優斗にも話すんだ… )




そう思うと、この場から逃げ出したくてたまらなかった…。





…そして


私は本当に逃げることにした。





「 …優斗、私 買い物行ってくる。」


「 …え、神菜?」



「 夕ご飯の材料、おじさんの分 足りないし…、」



そんな私の口実に対し、

おじさんなりの優しさなのか、おじさんはわざと明るい声で


「 お嬢ちゃん、わし なんか急にすき焼き食いたなってきたわ〜
お金やるよって、えぇ肉買うてきてやぁ〜。」


と、そう言って優斗のお財布から勝手にお札を全部抜き取り、私に握らせた。





「 …おい、おっさん、

それ 俺の…、」



「 細かいことは気したらあかんで〜


お嬢ちゃん、ほな 行ってらっしゃい。」




「 …行ってきます、」



「 えっ!?ちょっ、神菜!?」





優斗の制止の声も聞かずに、私はそのまま部屋をあとにした……