恋人ごっこ








…そうして、
部屋には優斗と私の2人だけとなった…



「 …神菜、ごめんな 」

優斗が私を抱き締めた。



「 …いや、あのっ、


優斗、あのおじさん 絵の師匠なんでしょ?

あんな酷い扱いして大丈夫なの?」



私が原因とはいえ、まさか優斗がこんなにキレるとは思いもしなかった…


恐る恐るそう尋ねると、
優斗は不機嫌そうに




「 もう俺は、あんな駄目なおっさんの弟子じゃない。」

と、ばっさり言い放った。


優斗曰く、
少し前に、あのおじさんとは縁を切ったらしい…





「 あのおっさん、
最後に会った時 俺の財布から、全額 盗んでったんだ…、」


と、忌々しそうに語る優斗。





たしかに、
それは酷い…、


そんなことをされれば、普段 温厚な優斗がキレるのも判る気がする…








「 盗んだなんて、人聞きの悪いこと言わんといてや〜

ただ拝借しただけやん。」



「「 !? 」」


いつのまにやら、再び部屋に入って来たおじさんが話に割り込んできた…


驚く私と優斗に対し、おじさんはただへらりと笑う。





「 昔のこといつまでも根に持っとたらあかんでぇ、

怒りっぽい男はモテへんで? なぁ、お嬢ちゃん?」


と、私に話を振るおじさん。



おじさんはそう言いながら、

さっき優斗が落としたコンビニ袋を漁り、なかにあったプリンを勝手に食べ出していた…。


…そのプリンは、
私の大好きなプリンで、優斗がいつも買って来てくれるものだった…