乗り込んだまま出港してしまった漁船のなかで隠れるように半日以上過ごしていると…、
あんなに居たくない家だったのに、
家に帰りたい と、
私はもう何度もそう思っていた…。
……あの時
そんな体験をしたもんだから、
その後 親とどんなことがあっても、
家を出ようなんて
私は思うことはなかった…
……もしかすれば、
それは
春兄ちゃんの作戦だったのかもしれない…。
家に帰りたくないと思う私を、
家に帰りたいと思わせたのだ……
今になって考えると、そんな気がした。
…いつだって春兄ちゃんは、
ただ慰めたりするようなことはしない…。
大事なことを気付かせてくれたり、気が付けないところで助けてくれていたりする……
…優斗との"恋人ごっこ"を終わらせてしまった時も、
ここからがスタートラインなのだと言った…
ユリのことでヘコんでい時だって、
ユリ以上に可愛くなれるように努力させた……
春兄ちゃんがいたから
気付けたこと、
気付いたこと、
いっぱいある……

