…10年前の
その日…、
初めて私は、母の中絶の話を聞いてしまった…
…私はずっと弟が欲しいって言っていたのに…
それなのに、
弟か妹になるはずの
その命を
母は産んでくれることはなく、殺してしまった…。
悲しくて、
辛くて、
自分が殺されたような気がして、
怖くて…、
…だから
もうあの家には居たくない
と、春兄ちゃんに泣いて縋ったのだ…
私がそう言うと、
春兄ちゃんは何を思ったのか、
「 神菜、今はそんな話してる場合じゃないぞ!
今日は、世界が滅亡する日だ!逃げるぞ!!」
…そんなことを言い出して
泣いている私と、
散歩途中だったミハエルを連れて、港の漁船に乗り込んだのだ……

