恋人ごっこ








「 なんで、海…?」






車から外にでてみると、


風は強いし、波は荒いしで、

とにかく寒かった……








私が訊くと、


春兄ちゃんは

静かにこう言った…








「 嫌なことがあったら海に向かって叫ぶのは常識だろ。」





「 ………。」








…そんな常識、

聞いたこと無い…
















…そう思ったけれど、


やっぱり もうツッこむ気力は出なかった…

















「 …とりあえず、



俺は、"あっきーの馬鹿野郎!!"って叫びたい…。」





そう言った春兄ちゃんの横顔は、


とっても切なかった…












…そして、



本当に

「あっきーの馬鹿野郎ぉおおっッッ!!!!!」




と、海に向かって叫んだのだった……









私に叫ばせるためにここに来たくせに、



なんで

自分がいの一番に叫んでるのだろうか…








…とはいえ、


私は叫ぶなんて恥ずかしい真似、最初からする気も無いのだけれけど……