恋人ごっこ








……優しくされたくなかったはずだったのに、




今は、

その優しさに縋りたくて仕方がなかった……。









部屋着のままカーディガンを羽織り、

携帯を片手に、静かに家から抜け出した…











『 ――…もしもし、

…神菜、もしかして もう家から出た…? 』




「 ………うん、」




私が、小さく頷きながら返事をすると、


電話越しに、優斗の焦った声が上がる








『 ……っ、頼むから、
もう少し自分の性別を自覚して行動しろ!!


今すぐ行くから、そこから動くなよ!? 』




そう言った優斗は、




その言葉通り、

すぐに家を出てすぐの私のところにやって来た…





たぶん

3分もかかっていない…








「 ………早っ、」




「 …いやっ、


神菜になんかあったんじゃないかと思って、近くまで来てたから…、」






息をきらせながら言われたその言葉に、また涙が滲んでくる…







「 …優斗っ、



……ありがとう。」








そう口にしたのと、



抱き付いたのは、







たぶん 同時だった……