恋人ごっこ



優斗の言葉に片平さんは少し困った顔をする



「 …いや、でももう遅いし… 」





「 電車の方が速いよ。


それに… …、」



断る言葉の後に優斗は少しの間を空けてから、





「 …2人っきりにせてよ。」


そんなことを言った。




「 っ!?」



言いながら優斗は、

自然な仕草で私の肩を抱いた…。







あまりの事に、私の心臓が跳ねる。








お父さんの前で、
なんて大胆な……







「 あっ、あぁ! そうか… ごめん、


じゃあ 気を付けて… 」





片平さんは慌てて納得したようにそう言って、私たちを見送る






「 うん。神菜、行こ 」




「 うっ、うん!!


お邪魔しましたっ、」





肩を抱かれたまま、


ドキドキで焦りながらも、見送る片平さんに挨拶をしてお家を出たのだった…。















「 ……神菜、今日はありがとな。


本気で助かった…。」




「 …うん。」






駅で電車を待つ間


そう言いながらため息を吐く優斗






「 素敵なお父さんだね


優しくて…、 」


うちの親とは大違い。
本気で羨ましく思いながら優斗に話しかけると、



「 ……そうだな、」



と、どこか 人事のような返事が反ってきた…。



なんとなく気まずくなって、

それ以上の言葉はなにも言わずに、ただ静かに電車を待った…