秋日の夕日が差し込む誰も居ない教室の窓枠に凭れ、ぼう、とグランドを眺めてる秋の姿は、まるで絵画の様に美しく、つい、見惚れてしまう自分が居た。


『あ、忘れ物?』


 俺が入口で呆けていると、気配に気付いた秋が、こちらに顔を向けて話しだす。


『……まあ…。それこそ、君はどうして……?』

『『君』じゃなく、秋って呼んでよ、涼平』

『……え?何で俺の名前を…』


 いきなり、学校の有名人から下の名前を呼ばれ、鼓動が強く跳ねる。


 何故なら、生徒会長なんて役職に就いてはいるものの、影の薄い俺の事なんて、誰も憶えてるなんて思ってなかったから……。


 だから、秋が初めて呼んでくれた『涼平』という自分の名前は、この時に命を吹き込まれたんだと思うんだ。


 そして、この日から、俺と秋の不思議な関係が始まったのだった―――。