スプーンで肉片を掬い、口に運ぶ。


 口腔に含んだ途端、解けていく肉の繊維に、心までもが蕩けそうだった。


 何時もと同じ味に、暫く舌鼓を打つ。


「本当旨いよ、秋のビーフシチュー」

「そ、か?」


 天真爛漫な輝く笑みを浮かべ、俺からの賛辞に応える秋。


「今回は脂肪が多くてさ、下処理に手間取ったけど、涼平の口に合って良かったよ」


 秋はそう言って、シチューと一緒に出されたパンの欠片を口に運ぶ。


 よく見ると、皿の中身は既に空となっていた。


 余程、腹が減ってたんだな。


 俺は苦笑に表情を滲ませながらも、食事を再開させたのだった。






 食事を終わらせ、二人で珈琲を飲んでいたのだが、ふと、頭の中がぐらつき、眠気が襲ってくる。


「……涼平?」


 と、声を掛ける秋の声さて遠くに聞こえ、瞼が重く落ちると共に、意識も深い何処かへと堕ちて行く様…だった…。


 ――…あ…き……?