「いらっしゃい」


 秋の家のインターフォンを押すと、すぐにドアが開き、秋の端正な笑顔が俺を出迎える。


「さ、入って、入って」


 そう言って、秋は俺を中へと促し、リビングに連れ込むと、両肩を押さえ、俺の躰はソファに深く沈められた。


「今、用意するからさ、待っててよ」


 秋は、俺に笑顔で告げると、キッチンへと向かう。


 俺は、そんな秋の後ろ姿を見送った後、躰を預けるようにして、ソファに凭れた。


 ふわん、と辺りからは良い馨りが漂う。


 鼻腔を擽る匂いに、お腹も期待しているのか、ぐう、と催促しだした。


 これでは本当に、秋に餌付けされているみたいだ。


 女性に裏切られる事に胸が痛む事はないが、秋が俺から離れてしまったら、きっと、泣いてしまうだろう。


 秋は俺にとって、『無二の親友』で、なくてはならない存在なのだから…。