正直、怪談めいたウワサなんて微塵も信じていなかったし、怖いとか思うよりもめんどうな気持ちが勝っていた。 ぎぃぃぃ。錆びた扉がそんな声を上げる。 広い礼拝堂だった。 十字に区切られた大きな窓が正面にあり、茂る木々とその間から下弦の月が覗いている。 ぞわりと、理由の分からない寒気が体を走った。 「……笑い声なんて、聞こえないじゃない」