「さーちゃんね、くまちゃんとお出掛けしたんだ~。遊園地に行ったんだ~。」


さなはとても嬉しそうに奈津子に言った。


奈津子も料理の手を止めてさなの嬉しそうな様子を眺めた。


さなはこれほどまでにくまちゃんと一緒にお出掛けがしたかったのか……と少し胸が痛んだ。


康は免許は持っているのだが車の運転が得意ではなく、奈津子は免許を持っていない。


そのせいで自家用車は持っていなかったが、せめて自家用車で動けるのならくまちゃんと一緒に色々な所に出掛ける事ができたのかもしれない。


奈津子はこっそり「ごめんね、さな。」と思った。


もっとゆっくりさなの嬉しそうな様子を眺めて、くまちゃんと遊園地の何に乗ったのか話を聞きたかったのだが、奈津子は朝の激戦の最中。


「さーちゃん、その話はパパに行ってらっしゃいしてからママに聞かせてね?」と言って、いつも通りリビングに向かわせた。


「はぁ~い!」という元気な返事を残してさなはリビングに消えていった。


「パパ、さな、くまちゃんと遊園地にいったんだよ!」というさなの声がリビングから聞こえてくる。


政治家の汚職に絡んだニュースに夢中な康は「そうか、良かったな。」と気のない返事を返していた。


奈津子は、その素気なさに少し苛立ちを覚えた。