「今日は本当にご馳走様でした」


「本当に送らなくて大丈夫ですか」


「はい。リオちゃんも居ますし」


「ありがとう。おやすみなさい」


「おやすみなさい」



あたしはマンションに背を向けた。

暗く街灯の少ない道をひたすら進む。

いるんでしょ〜?

心で叫ぶ。


「...」


空からふらふら〜っとジンが降りてきた。


何も言わずに。


「気にしてんの?」


口をとがらせたジンはまだ何も言わない。


「憧れよ。憧れ」


1メートルほど後ろを飛ぶ影が少し近付いたのが分かった。


「憧れは強くなったわ。だって。亡くなってからもあんなに愛して止まないんだもん」


あんな風に誰かを愛したい。
愛されたい。


失恋...なんかよりも

その気持ちが大きかった。


「あの...その...」


しどろもどろのジン。


「何困った顔してんのよー」


「俺、余計な事...」


「いい勉強出来たもーん」


「美羽」


「何よ、その顔〜」


思わず吹き出す。


「あ〜、お腹減ったぁ」


「美羽は食ったじゃん」


「減ったの〜!アイス買って帰ろ」