僕だから受け入れたって、あの時のスミレは記憶が無いはず。
それなのに、僕だからというのは‥

「本当は、思い出していたって事?」
「違うよ。思い出したのはアオちゃんが“我を失った”時」
「じゃあ‥何?」
「‥ボク、ね。あの時アオちゃんの事好きになってたんだ」

記憶が無くても、惹かれて好きになった。
微笑みながらそう言うスミレは、真っ直ぐに僕を見つめてきた。



「ボクは、アオちゃんに二度も恋をしたの」



僕の胸に頭を埋めて、恥ずかしさを紛らわすスミレ。
僕は頭の温度が一気に上昇していくのを、ただ感じていた。
‥‥ちょっと、直球過ぎない‥?

「これって凄い事だと思わない?同じ人に2回も引かれるっての」
「‥あ、うん」
「これならきっと、花ちゃんみたいに来世でもアオちゃんを見つけれる」

また、一緒になれるよ。
幸せそうに笑うスミレを、僕は複雑な気持ちで見つめた。
この複雑さは、もうスミレの傍に居れないという気持ちからじゃない。
僕の傍で幸せそうに笑うお前の前から



どうして、いなくなろうとしたのか。

どうして、悲しませる様な事をしようとしたのか。



自分が許せなくて、情けないという複雑さ。