その言葉に、僕は救われた気がした。
けれど、僕は‥

「それでもきっと、僕の方が最低だと思う」
「‥あの事、気にしてるの‥?」

スミレが言った『あの事』が、何を示しているか直ぐに分かった。
“我を失った”時の事じゃない。
スミレが記憶を失っていた時で、僕と生徒会室で2人きりだった時の事だ。
黙り込んだ僕を見て、スミレは上げた顔をまた直ぐに下げた。
あの事は、謝って済むような簡単な事じゃないと思っている。
相手の了承も得ずに、僕が勝手にした事なんだから。

「気に、してるんだ‥」

何も言わないままの僕に、スミレはそう判断した。
あんな事をして、気にしてないよ。なんて言える筈がない。
互いの視線が砂浜を泳ぐ。

「‥‥れば、いいじゃん‥」
「‥何?」

ポツリと吐かれた言葉が分からなかった。
もう一度、と訊き返して、スミレを見下ろした。
スミレは僕を見上げる。

「だから、ヤりたかったらヤればいいじゃんっ!!」
「は、はぁ‥ッ!?」

さっきの僕に殺されたっていいって言う発言といい、
‥こ、コレといい‥。
何なの、この子。

「‥あのねぇ、自分の体の事なんだよ。そんなに簡単に言わないの」
「簡単だよっ!!」

ぐいっと僕の服を引っ張ったスミレは、僕と目が合うと目を逸らして言った。

「だって、相手がアオちゃんだもん」

恥ずかしそうに言うもんだから、僕もなんだかやりきれない恥ずかしさを感じた。

「アオちゃん以外の人なら、そりゃぁもう大問題。でも、アオちゃんだから‥」

だから、ボクは最終的に受け入れたんだよ。
僕の服をさらに強く握るその小さな手に、僕は自分の手を添えた。
一つの、疑問を抱えて。

「‥どういう事?」