「‥お前、あの先何て言うつもりだった?」
「‥‥」
「もし俺が『悪い』って言ったら、俺の前から消えるつもりだったか?」
紅の言葉に、何も返す事が出来なかった。
そう、だよ‥。
消えるつもりだった。
そうしたら紅は今よりも、もっと、ずっと‥
幸せになれるだろうから。
何も言わない私に対して、紅は表情を険しくした。
「図星かよ」
「‥ゴメン」
やっと出た言葉は、これだけ。
紅は私の上から退いて、ソファーの端に腰を掛けた。
気まずくなったその場を逃れようと立ち上がれば、手を掴まれた。
これじゃあ、逃げられない‥。
「あ、あの‥」
「お前には悪ぃがな、俺はお前から離れるつもりはこれっぽっちもねぇ」
視線をどこか部屋の隅に送って、紅は言った。
「俺はな、お前がいないと生きていけないんだぜ?」
そうだね。
私の血が無いと、紅は生きていけない。
だからそれは、血の為でしょう?
欲しいなら、いつだって、いくらだってあげるよ。
でも、私が思っている事をまるで‥
分かっているかの様に‥
見透かしている様に‥
「それは血の為なんかじゃねぇ」
そんな事を言うもんだから、‥つい、欲が出てしまう。
「じゃあ、何の為‥?」

