「な、何?なんの冗談‥?」
「冗談で、こんな事言うと思う?」
「‥‥」
返す言葉が見つからなかったのは、アオちゃんの表情があまりにも本気だったから。
どうして?
ボク、何かした?
『それにボク、鈍感だから。‥アオちゃんを傷付ける様な事言ったでしょ?』
嫌われる様な事、した?
“好きな人がいるか訊いてみたり”
“勝手に好きな人がいるんだって思ったり”
‥‥なら、ボクは‥
「‥そ、そっか、うん‥わ、分かった」
アオちゃんの思う様に、させないと。
「アオちゃんがそれでいいなら、いいよ‥」
だって、大好きだもん。
だから困らせたくない。
ボクの存在で、縛りたくない。
「ボク、アオちゃんの邪魔をしたくないから」
「‥‥」
「でも、ね」
これだけは、言わせて。
「ボクはずっと、‥アオちゃんを想っているから」
だから、いつでもボクのところに帰って来て。
ずっとずっと、待っているから。
先に背を向けたのは、ボクだった。
アオちゃんがボクから離れるのは、要するに‥
ボクが、必要無くなったからでしょ?
「‥っ、ぅ‥」
堪えていた涙が一気に溢れ出してきた。
アオちゃんとの距離が遠くなる程、ボタボタと量を増して落ちる。
空気に冷やされて、直ぐに冷たくなる涙。
ふと、ボクは顔を上げて振り返った。
今までアオちゃんがいたところには、
もう、なんの姿も影も無かった。

