アオちゃんにゆっくりとした足取りで近づきながら、ボクは改めて外の寒さに身を震わせた。
こんなに寒いなら、コート羽織ってくれば良かった。
さっき寝ていた部屋に、置きっ放しだ‥。
「桃がね、夕飯出来たって」
「‥そう」
「外寒いし、早く行こう?」
何度確認しても、震えている自分の声。
ぎゅっとアオちゃんの手を握れば、とても冷たかった。
それは、氷を握っている様に。
「手、冷たすぎ」
「お前は、温かいね」
「走ったもん」
その冷たい手でボクの頭を撫でると、アオちゃんはボクを抱き寄せた。
接しているところから伝わる、微かな温もり。
自分の口をボクの喉元に近づけて、囁いた。
「スミレは、何も知らないままで良かったのに」
「え?」
「何も、知らないままで‥」
「あ、アオちゃん‥?」
アオちゃんの顔を見ようと、身を捩ったその時。
急に、喉元に衝動が走る。
「‥っ!?‥ぃ、た‥!!」
久しぶりの痛みに、ボクは苦痛の声を上げた。
いつもより、強く血を吸い上げられる。
「っ、そんなに、吸わな‥くて‥もっ」
いつでも、あげるのに。
いつもより、長い“食事”。
ボクはそれに疑問を持った。
なんで?
何だか、様子が変だよ‥。
「スミレ、僕はもう、戻れない」
「ど、こに‥?」
「お前のところに」
「‥ぇ?」

