アオちゃんを一発叩いて、ボクはズンズンと寒い廊下を突き進んでいた。
行き場所はもう決まっている。
というより、足が勝手にそこを目指していた。
今日は夜に雪が降るらしいから、それなりに空気は酷く冷たくなっていた。
だから、こんな時に屋上ってのはどうかと思ったけど‥‥
「っわ、寒ッ!!」
廊下でも十分に寒いのに、外は廊下の何倍も寒かった。
それでも、ここに来ると落ち着くのは何の変りも無くて。
「‥はぁ」
大きく吐いた溜め息は、白くなって周りの空気に溶けた。
ボクがアオちゃんを叩いたのは、ただの勢い。
悪い事したなぁ、とは思ってるけど。
アオちゃんはいつもなら自分にとって都合の良い事言って、その場を何とか紛らわせようとしたりするのに。
なのに、今日はそんな事しなかった。
それが逆にボクの不安を駆り立てた。
それに、ずっとボクに何も話しかけてこなかったし。
だから、
もしかしてあの子の事‥‥
って、思ってしまって。
そう思ったら、何とも言えない気持ちになって。
何も言ってくれないアオちゃんにイライラした。
でも、一番イライラしたのはそう思ってしまった自分にで。
それで‥、いつの間にかアオちゃんに手を出してしまって。
「はぁぁ‥」
何やってんだろ。
ボク、最低じゃん。
金網に手を掛けて、街の風景をジッと見る。
不意に北風を感じて、身震いをした。
やっぱり、年を越したばかりのこの季節は寒いや。
こういう時は、体動かして温まるのが一番だねっ!
‥‥あんまり、気分乗らないけど。

