先輩にお礼言う事なんて、一生無いと思っていたのに。
それでも僕の口は動いていて。
満足気な先輩は、更に僕の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
「おぉ、結構派手にやったと思っとったに」
「案外、被害が無い様ね」
さっき先輩が携帯を弄っていたのは、この人たちを呼んだからだろう。
金ちゃんは僕の隣を過ぎる時に、何故か先輩と同じ様に頭を撫でた。
‥‥何故?
「はぁ!?何言ってんだお前ら。俺を良く見ろっ!!」
先輩は自分の胸を指すが、金ちゃんと華ちゃんは完璧無視。
‥可哀想に。
「じゃあ、行きましょう」
華ちゃんは金ちゃんと僕と自分の鞄を持った。
「じゃ、桃を頼むな」
「おう」
金ちゃんは軽々と桃を抱えた。
成程ね。
先輩はこの為に金ちゃんを呼んだのか。
先輩の事だから、あんな傷を負っていても桃を抱える事は出来るだろうけど、胸があんなに血だらけだからね。
桃に血が付いてしまうからっていう、配慮なんだろう。
でも、桃はそんな事あんまり気にしそうにないかな。
初めて会った日、血だらけの先輩に構わず抱きついたし。
「葵、ガキ抱えて付いて来い」
「うん、何処行くの?」
「‥お前とガキが前々から行きたいって五月蝿く言っていたとこ」
‥‥は?

