「お前、死ぬ気かっ‥!?」

紅の怒鳴り声が、耳に響いた。

「“契約”した奴以外の血を口にしたら死ぬんだぞっ!!」



‥‥また、“契約”?



「それも分からなくなっちまってんのかよっ!!」

紅から掴まれた腕を、浦さんは乱暴に払った。
そして、切り付けた腹部に更に蹴りをくらわせる。

「ぐっ‥」

多分、力の加減はしていない。
紅がボクの後ろに吹き飛んだから。

「‥‥っ」

ボクは制服の裾を握りしめる。
今度こそというように、浦さんはボクの前にくると立ち止まった。

しばらく、その虚ろな瞳と向き合う。



ずっと見つめているとね、その深い深い海の色をした瞳に

吸い込まれそうになるんだ。

吸い込まれて、もう抜け出せなくなりそう。
でもね、ボクにとってもしかしたらそれは‥‥



本望



なのかもしれない。

浦さんの事が好きだから。
だからそんな人が、他の誰かを傷付ける姿は‥‥

「‥見たく、ないよ」

ボクはいつの間にか涙を流していた。
ポロポロなんてもんじゃない。
ボロボロと流れ落ちてきて、止まらない。

「浦さん」

呼んでも、何の思いも通じない。
浦さんはボクを乱暴に突き飛ばすと、倒れている桃を掴み、拳を振り上げた。

「ダメっ!!」