紅さんは確実に浦さんの攻撃を交わしながら、ボクの方に近づいてくると
桃をボクの近くに寝かせた。
見た目では全く判断出来ない程に、優しく。
「桃を頼むっ!!」
ガガッと爪と爪がぶつかる音。
浦さんが大きく腕を振った時の不意を衝いて、紅は浦さんの背後に回った。
そして、その爪で‥‥
「止めてっ!!」
背中を引っ掻こうとした手を、ボクは声で止めた。
ボクの悲鳴に近かった叫びを聞いた紅の手が、ピタリと止まった時だった‥。
ザシュッ
ボタボタと重力に従って落ちる赤。
地面をどんどん染め上げていく赤。
その白いワイシャツには、その肌には
十分に映えて見える赤。
「うッ‥」
ガクンッと膝を落とした紅の横を無表情のまま浦さんは通り過ぎた。
そして、その足が向かった先は‥‥
桃と、ボクのところだった。

