外が真っ暗になった頃。
僕はシャツを手にとって着る。
「‥浦、さん‥‥」
白いシーツを体にかけているスミレは、僕の名前を静かに呼んだ。
スミレはその瞳からボロボロと涙を零しながら、横に立っている僕に視線を動かした。
その涙は、止まる事を知らない。
「何で、ボクにこんな事したの‥?」
‥‥
「好きな人、いるって言っていたでしょう?」
それは、お前。
「好きで、しょうがないって‥‥」
そうだよ。
好き過ぎて、しょうがない。
「なのに何で‥ッ!!」
僕はそんなスミレを、ただ見る事しか出来なかった。
あの行動で、スミレは僕を脅えたから。
「スミレ、何で泣いてるの?僕が怖いから?」
僕との記憶が無い上に
出会って2週間程しか経たないうちに
こんな事をされたのだから。
怖いのは、当然だろう。
「違う、‥怖くはないよ」
怖くないという言葉がスミレの口から出てきた時、
嬉しいような、何というか複雑な気持ちになった。
「じゃあ、どうして?」
「‥‥ボクにも、分かんないよ」
泣きじゃくるスミレの頬に手を伸ばそうとしたが
ぐっと目を瞑るスミレを見て
その手を、引っ込めた。
椅子に掛ったブレザーを羽織り、扉の鍵を開けて廊下に出ていく。
「もう直ぐ下校の時間だから、着替えたらさっさと出て行きなよ」
「‥‥はい」
冷たい言葉を一つ置いて、僕は静かに扉を閉めた。
残ったのは、虚しさと後悔だけではなかった。
スミレに対する、大きな
罪悪感。
これはずっと、僕の中で生き続けるだろう。