「‥となるの。って、ちょっとスミレ、聞いてる?」
「え?‥あ、ゴメン」
今はそんな事考えなくていい。
勉強教えてくれているんだから、ちゃんと聞いてなくちゃ。
その時、ガチャガチャと生徒会室の扉を開けようとする音。
でも、扉は開く事がなくて‥‥
ボクはソファーから体を起こして、扉の方へ行こうとしたら、浦さんがボクの腕を引っ張った。
「な、何?」
「しーっ、わざと鍵閉めてるから」
「何で?」
「厄介な人が来るから」
‥‥厄介?
「それに、邪魔されたくないし」
邪魔?
しばらく静かに息を潜めていたら、ノックは止まった。
そして遠ざかっていく足音が耳に届く。
そうか、その人を避ける為に、いつも開けているカーテンも閉めてたんだ。
はぁ、と大げさに溜め息を付いた浦さんは、コーヒーをカップに注いだ。
「スミレは、いつものでいいね?」
「‥いつもの?」
「あ、えっと‥この前の紅茶」
ボクの返事を訊かないうちに、カップに紅茶を注ぎだす浦さんは、また小さく溜め息を吐いた。
「ボク、いつもここに来てたの?」
「‥まぁね」
「じゃあ、浦さんとボクって知り合いだったんだ」
「‥‥」
浦さんは何も言わない代わりに、顔を顰めた。
ねぇ、浦さん。
訊かなくても分かっているんだけどね‥。
「浦さんって、‥好きな人、いるの?」

