放課後、スミレの教室に向かっていた。
昨日貸してもらった、手袋を持って。
スミレの教室を覗き込めば、華ちゃんと2人で話していたところだった。
「菫、どうしたの?なんか元気ないじゃない」
「え‥?そんな事ないよ。元気だって」
「さっき、隣のクラスの神上って子に呼び出されたみたいだったけど‥、何かあったの?」
神上‥?鳩羽ちゃんが?
「ううん、別に」
スミレは華ちゃんから視線を外して言った。
それは、お前が嘘を付く時にする癖。
お前は絶対に、人の目を見て嘘を付かないから‥‥
「スミレ」
「あ、浦さん!」
「手袋、昨日はありがとうね」
手袋を差し出した時、手と手が触れた。
今日も、スミレの手は温かくて‥‥
「今日も、冷たいね」
今日も、僕の手は冷たかった。
「浦、さん‥?」
「うん、桃の彼氏の同級生さん。前生徒会長だから‥、あ、華ちゃんは知ってるか」
「菫、あんたはこの人の事‥」
「華ちゃん」
言おうとした言葉を止めさせ、僕は人差し指を唇に押した。
それは、言わないで。という合図。
これを見た華ちゃんは、ぐっと、口をへの字にした。
「あ、葵様っ」
と、そこへ鳩羽ちゃん乱入‥‥。
何でこんなに会う回数が多いのか。
これじゃあ僕、体持たないんだけど‥‥。

