「やっぱ‥、ダメ」
「ん?」
「これ、今のアオちゃんの瞳と同じ色だから」
また、ドキドキするもん。
そう言われて、僕は嬉しいのか嬉しくないのか。
ていうか、この海とガラスに何妬いてんの、僕。
ガラスを海へ思いっ切り投げると、後ろでスミレが声を出した。
「もったいない~、綺麗だったのに」
他の色のガラスを探していたスミレが、僕のところに戻ってくる。
手にはもう、緑と茶色とおそらく透明だったガラスが。
「別にいいでしょ、お前は“僕”に見られていればいいの」
「‥海とガラスなんかに妬いたの?」
「さぁ、どうだか」
とぼけて見せれば、え~、どうなの!?と訊き入ってきた。
僕はそれを綺麗に流しながら、浜辺をまた歩き出す。
前にガラスが『ダイヤモンドに負けないくらいに綺麗だ』って思ったけど
やっぱり、
「ダイヤモンドの方が綺麗かも」
「?」
隣を歩いていたスミレは僕に首を傾げた。
僕は何も言わないで、ぽんぽんと頭を撫でる。
ダイヤモンドは傷つけば傷つく程、光出す。
まるで、僕たちの様に。
「あのさ、アオちゃん」
「ん?」
「ちゃんと訊いてなかったから、訊くけど‥」
ガラスを砂浜に落として、その代りに僕の手を握る。
「約束は、ちゃんと守ってくれるよね?」
『一緒に過ごす中で、たくさんの良い時間を作るって‥約束してくれますか?』
『うん、約束する!!』
「不安なら、もう一回約束する?」
「‥ううん、一事に約束するのは一回だけだし」
「そう?」
「それにアオちゃんがそう言うって事は、守ってくれるって事でしょう?」
「もちろん」
「なら、いい」
僕の手を離さずに、スミレはそのまま海を見つめた。
海は、ドキドキするって言っていたのに。

