残響*Impression

父は若い頃に、知り合いが立ち上げたオーケストラの集まりに参加していた。


小さい頃、母と演奏を何度も、何度も聞きに行った。


楽しそうに演奏する父、一人一人から奏でる音が協和する事に魅了されるばかり。


小学校に入学し、高学年になると“器楽部”という活動の場で、トランペットに触れる事になる。


父に話すと、直ぐさま、家での練習用にと、トランペットが与えられた。


嬉しそうに練習に立ち会ってくれていた、父はもう居ない。


中学受験が近付くにつれ、塾だの家庭教師だの、勉強の事しか言わなくなった。


―――だんだんと擦れ合いが生まれたのは、その時から。


父がプレゼントしてくれたトランペットで、父のように楽しそうに演奏するのが夢だったのに…


ガタガタと音を立てて崩れて行って、夢は葬り去られた。