風が体を包む。


その冷たさが、冬を奏でているような気がした。


ビルや活気に溢れた店が立ち並ぶ都会。


子供の頃から大切にしていたトランペットと小さなボストンバッグを持ち、家出して来たアタシ。


拾ってくれて、支えてくれたのは貴方でした。


ショッピングビルの大きなスクリーンに映る貴方の姿、歌声、響き渡る旋律、冷えた身体にどこまでも浸透し、自然と涙が零れ落ちる。


歩道に立ちすくみ、スクリーンの目の前から離れられないアタシの側を幾人もの人が通り過ぎて行く。


笑われたっていい。


―――今、この時に、この瞬間に、貴方を目に焼き付けて置きたい。


大好きでした。


『さよなら』を言わずに去ります。


たった一年だったけど、沢山の“幸せ”を貰ったよ。


どうも有難う。