「ありがとう」
「いや…こっちこそ…」
訳の分からないことを言う俺に、彼女はまた笑った。
「じゃあね。」
「あっ、あのさ…」
「ん?」
「泣いたの…?」
自分の頬を手で触り、確認する彼女。
それが答えだった。
もっと他に聞くべきことがあっただろう。
でも、勝手にその言葉が出てきたんだ。
自分でも驚くよ。
「怖い…嫌な夢をみたの。」
「大丈夫?」
「うん。大丈夫。」
それは、痛いくらいに優しい嘘だったのだろう。
今の俺には、気付けるハズがなかった。
「バイバイっ!!」
ムリに明るく装う彼女が、本当に痛々しかった。

