あの日は、月に数回程通っている小さなバーのMemoryに足を向けた。
月に数回と言っても、まったく行かない時もあったりと、気が向いた時にだけ訪れる場所だった。
入ってすぐカウンターが見える為に、すぐに人が座っている事に気付いた。
その後姿を見てなんとなく悠斗に似てると思ったけど、額がテーブルにくっつきそうな程、俯いていたからはっきりとはわからなかった。
あのバーで悠斗を見かけた事はなかったし、気のせいかなと思ったんだけど、どうしても気になって、その人が座る席から2つ程席を離して座った。
そこでようやく、やっぱり悠斗だとわかった。
どうしてあんなに酔ってたのか疑問にも思ったけど、話しかけるつもりはなかった。
だけど、10分もしないうちに悠斗が立ち上がったかと思うと、フラッとよろめいたから、俺は慌てて悠斗を抱きとめて『大丈夫?』と声をかけた。


