「ああやって、手を合わせて願い事を頭ん中に浮かべんだよ」

「なんで?」

「なんでって、おめぇ、そうすりゃ神様が叶えてくれるかもしれねぇだろ」
          
            
沼田の説明にも、タカヤは首を傾げている。
            
             
「誰も本気で信じちゃいねぇよ。縁起もんってやつだ。そう深く考えるなよ」
           
               
いつまでも十円玉を投げようとしないタカヤに苛立って、沼田はタカヤの手から十円玉を奪い取った。

吃驚して顔を上げたタカヤの目の前で、十円玉を賽銭箱に向けて放り投げる。