「おら。手ぇ出せ」
         
              
人込みの後ろにつき、沼田は、タカヤに手を出させた。

沼田に突き出したタカヤの手のひらに、十円玉を載せる。
           
         
「これを、賽銭箱に投げて、なんでも願い事をしな」

「ネガイゴト?」

「やったことねぇのか?」
           
             
タカヤは、不思議そうに十円玉を見つめている。
          
            
「なんかあるだろ、さっきのねぇちゃんとやりたいでも何でも」
          
            
ぎゅっ、と、十円玉を握り締めて、タカヤが、辺りを見回す。

賽銭を投げては、手を合わせてささやかな祈りをしていく人々。