そう言って笑うタカヤの笑顔に、沼田は鼻の奥が痛くなった。

照れ隠しに、タカヤの頭を叩く。
           
          
「馬鹿か、おめぇは」
          
              
シャブ漬けにされて、売人として利用されて。

気紛れに殴られて、優しいことなど、沼田の気が向いた時にしか与えられなくて。

こんな生活から、逃れたいと思うどころか、住み続けたいと思うなんて。

愚かで、だからこそ幸福な。
          
             
「それじゃ、願いことじゃないじゃねぇかよ?」

「んじゃ、沼田さんにぃ、あげる」

「あ?」

「オレの、ネガイゴト。沼田さんに、あげる」

「いらねぇよ、バカ」
             
               
この図体のでかいシャブ中の愚か者を、ふいに抱き締めたくなって、代わりに沼田は、手の中の紙コップを握りつぶした。