【奏】雪に願う事

毎日、毎日
泰生先輩に声をかける日々。


泰生先輩から
声をかけて貰った事はない。


でもね

それでもいいんだ。



私は泰生先輩が好き。



ただそれだけで

心が好きでいっぱいになる。







今日は泰生先輩、
委員会だって言ってたもんね。



下駄箱で待ち伏せしちゃおっ。







早く出て来ないかなぁ。







はぁ…




寒いなぁ…。






長いなぁ…。






今日の委員会は長いのかな…。






空を見上げると

夕焼けの寒空に雲が浮かんでる。




かじかむ両手を合わせて

そっと息を吐きかけた。




今日に限って
手袋忘れちゃうなんて…。





寒くても

ただ泰生先輩に会いたくて


待っちゃうんだ。




泰生先輩の事を考えてると

ガヤガヤと数人が
出てくるのが聞こえる。



思わず振り返るけど

泰生先輩の姿がなくて…。



ただそれだけなのに

肩からストンっと力が抜けるのが

自分でもわかる。



人気がなくなり

静かになって

また空を見上げた。




「おまえ何やってんの?」



どれだけの時間が過ぎたのか
わからないけど
不意に背後から声が聞こえた。



大好きな泰生先輩。


顔が見えなくても
声だけでわかっちゃうんだ。



「泰生先輩」



満面の笑みで振り返る私に
お決まりのいつもの呆れ顔。



「ストーカーかよ」



うぅ…キツイ…

でもでも



「まぁそんなところです」



「ばぁーか」



そう言いながらも
目が優しいんだよ。