「あの時の心暖も
一生懸命で
可愛かったんだよな。

あの時から
俺は心暖に
掴まってしまったんだろうな」




「えっ?」



そう問いかけた
私の視界に入ったのは
愛おしい大好きな人の背中と
耳を真っ赤にした後ろ姿。




「帰るぞ、ほらっ」




差し出された手に

そっと自分の手を添えた。




握り締めると

優しく強く
握り締め返してくれる。





「私もその時から
泰生先輩の優しい瞳に
掴まってたよ」




「えっ?」




「何でもな~い」





そう誤魔化すけど
きっと聞こえてた…はず。



だって――…


満足そうな
優しい笑顔を向けてくれる。


外に出ると雪がちらついてた。




「寒いな」




「うん
でも泰生先輩といると寒くない」





1本の傘に

恋人になったばかりの2人。




繋がれた2人の左手は
彼のポケットの中。




余った右手には同じ茶色の手袋。





ずっと…
雪が溶けませんように…。




ずっとこの想いが…

幸せが続きますように…。



2人寄り沿い

そう雪に願う

泰生と心暖の後ろ姿。





雪が溶け

季節が廻り

取り巻く環境が変わっても

きっと変わる事のない情景

永遠に…。




今、2人の道が繋がり

永久(トワ)に続いていく――。




【fin】