【奏】雪に願う事

「いつも心暖の気持ち
嬉しかった。

照れて名前も呼べねぇし
優しくだって出来ないし
邪険に扱ったけど…

あん時だってツレにからかわれて
適当に誤魔化しただけで…
本心じゃねぇし…。

心暖が聞いてるなんて
思わなかったんだ。

傷つけてごめんな…」




夢なら…
…覚めずに

ずっとこのまま…

こうしていたい…。



目蓋を開けば
終わってしまいそうな夢。




「心暖が会いに来なくなって
どれだけ毎日が
心暖でいっぱいだったか
思い知らされた。


今までの分、今度は
俺が心暖に会いに行くから…」




泰生先輩が呼んでくれる名前が
すごく心地良くて…。



まるで、愛の告白みたいな台詞に
こんな現実があるなんて
思えなくて…。




そっと緩まった腕に
もう少し…そう思う気持ちと…




「…心暖」



優しく切なく呼ばれた声に
導かれるように顔を上げた。




あぁ…夢が終わっちゃった…



目蓋を開いた途端
目に映ったのは
切なそうな泰生先輩の
優しい瞳。




「俺は…心暖が好きだ」




………。

……。

…。




「えっ?」




夢じゃ…ない?





何…言ってるの?




「泰生先輩が…私を…好き?」




「…あぁ

これからも傍に…いろよ」




ぶっきら棒な…だけど
優しい声。