【奏】雪に願う事

冷え切った身体で
チャイムが鳴り響く中
休み時間になってから
教室に戻った。


駆け寄ってきた澪は
拗ねた表情を浮かべてる。



「心暖!!!
どこ行ってたの?!
1人でサボるなんてズルイよッ」



「えへっ」



「何がえへっよ?!」


怒りながら
私の腕を掴む澪。



「ちょっ!!
心暖どこでいたの?
身体めちゃめちゃ冷たいよ」


そう言いながら
自分のひざ掛けを
肩にかけてくれる。

心配している表情からも
澪の優しさが伝わって
涙が零れそうになる。


「何があったの?」



「何でもないよ」


そう笑って言うのがやっとで…。


心配顔の澪が
納得していないのがわかるけど
笑って誤魔化すしか出来ない…。



それ以上、
澪は何も言わなかった。



だから、私もそんな澪に甘えて
何も言わなかった。



夕方になっても
降り止まない雪。



空が薄暗くなる頃には
積雪に変わってた。



コートを羽織り
傘を差し
誰もいない校舎を後にする。



誰も歩いていない場所を

探し歩くと


キュッ

キュッ



私の足音だけが響く。



私の心と同じ


寂しくて

切ない

雪の音を奏でてる。



舞い落ちる雪に願う事…。



それはただ1つ…。



もう一度だけ…
…許してください…。



いつまでも踏みしめる雪は

悲しい音を響かせてた。



頬に流れる涙と共に…。