【奏】雪に願う事


一筋の涙が頬を伝わる。



「でもさ、
一生懸命なの可愛いけど
ちょっとあそこまでやられると」



「重いよな」



「確かに~」



笑い声とは逆に

ズキッと痛む胸…。



泰生先輩が何て答えるか

聞きたくない…。




人影が差し掛かった瞬間

その場から走り出してた。




わかってた…。


わかってた…。


一人よがりの恋だって…。




それでも

泰生先輩に近づきたくて

あの優しい瞳に見つめられたくて

近づきたくて…。




ただ必死だった。



それが正しいかなんて
…わからない。



それでも…。




―過去―



「心暖って
真っ直ぐで可愛いんだけど
あの一直線なとこが怖いよな」



「そうそう
あれは男が重いって感じるよな」



片想いしてた男の子が
笑いながら
友達としていた会話。


幼いながらも傷ついた…。


だけど…いつしか

記憶の片隅に追いやり

忘れてた記憶。



同じ事…繰り返しちゃった。




そのまま、屋上に駆け上がった。



こんな寒い日は誰もいない。



屋上から見える
体育館に続く渡り廊下。



こんな時でも

真っ先に見つけてしまう泰生先輩


涙が止め処なく頬に流れ落ちる。



誰を好きになっても…


私の気持ちは迷惑で重いだけ…。