【奏】雪に願う事

毎日、ポケットに入ってる手袋に
そっと触れては顔が綻ぶ。


「心暖~

あんた顔ヤバイよ」



「いいんだもーん」



澪の毒舌なんか気になんない。



「はぁ~

どうせ泰生先輩でしょ。

どうでもいいけど」



「どうでも良くないもん」


頬を膨らませた私に
澪が呆れながら
大きなため息をつく。


「はいはい

それよりもさ
今日の買い物、覚えてるよね?」



「もちろんだよッ」



軽く流されたけど
こっちの方が重要。



あと1週間でバレンタイン。



何だかそわそわしちゃうよね。



でも、きっとそれは
私だけじゃない筈…。



「澪は手作りするんだっけ?」



「うん

俊がトリュフ食べたいとか
言うからさ」



面倒くさそうに言いながらも
幸せそうな笑顔。


そんな澪が微笑ましくなる。



でも、いいなぁ…。


澪が羨ましい。


私も泰生先輩に言われてみたい。



「心暖も作るか買うか
いい加減決めたの?」



「ん~…それがさ…微妙?」



へラッと笑った私に
鋭い視線の澪。



「2択しかないんだけど…

本気なのをわかって貰う
絶好のチャンスだよ?」



「わかってるけどさ…」



「心暖は意外と
お菓子作り得意なんだから
こういう時にアピっとかなきゃ」



「意外って…」


「この前、心暖が作ってきた
ガトーショコラとか
美味しかったよね~」



何…その目は?



「泰生先輩にも作ってあげなよ」



何で?

小首を傾げる私に
澪がニヤっと笑った。