「おい、何やってんだ
帰るぞ?」
えっ?
「一緒に帰らねぇなら
別にいいぞ」
「帰るっ!!!
帰りますッ!!!」
慌てて前を行く泰生先輩を
小走りで追いかけた。
一緒に帰れるだけで嬉しくて
ドキドキする。
自分の手を見つめると
大きくてブカブカの手袋。
それを見つめるとニヤけちゃう…
「何?
そんなにその手袋
気に入ったのか?」
「ハイッ」
泰生先輩の手袋だから…。
「じゃあ、やるよ」
「えっ?!
でも…
先輩が困るじゃないですか…」
「俺、もう1つ持ってんだよ」
そう言いながら
ポケットから黒い手袋を取り出し
泰生先輩は手にはめた。
「いいんですか?」
「あぁ
おまえ鈍くさいから予備にでも
持っとけば?」
ぶっきら棒ないつもの言い方。
「嬉しい~」
後ろから抱きついた。
「バカッ!!
何度も言わせるんじゃねぇよ」
「本当に泰生先輩が好き」
「わかった
わかったから離れろ」
うぅ…やっぱり本気にされてない
泰生先輩は簡単にすり抜けると
不機嫌そうに振り返った。
「おまえ、いい加減
抱きつく癖やめろよな」
だって…。
それだけ言うとクルリと反転して
前を歩いていく。
先輩の隣に小走りで追いつくと
ほらね
歩調を少し下げて
私に合わせてくれる。
泰生先輩を見上げると
呆れながら私を見て
大きなため息。
それでも、泰生先輩の優しさ
ちゃんと伝わってるんだよ?
私の気持ちも…
ちゃんと伝わればいいな…。

